東京高等裁判所 昭和31年(う)2344号・昭31年(う)2345号 判決
被告人 金煥祚 外二名
〔抄 録〕
弁護人の論旨第一点について。
所論は、原判決は訴訟関係人の同意しない書面を証拠に採用した違法があるというのである。そこで記録を調査すると、所論指摘の各書証はいずれも昭和三一年六月一九日の原審第三回公判期日に検察官から提出されたものであるところ、同日の公判調書添附の証拠関係目録には右書証について刑事訴訟法第三二六条所定の同意の有無についてなんらの記載がなされていないことはまことに所論のとおりである。しかしながら書証の証拠調に関する同意の有無は公判調書に必ず記載しなければならない事項ではないから、証拠関係目録にその旨の記載がないからといつて、直ちにその同意がなかつたと速断するのは相当でない。これに反し、刑事訴訟法第三〇九条の異議の申立及びその理由は公判調書の必要的記載事項であるが、前記証拠関係目録の当該の欄にはなんらその旨の記載がないところからみると、検察官から前記書証が提出された際、被告人や弁護人から全然異議の申立がなされなかつたものと認められるばかりでなく、原審における審理の経過をみると、被告人金正雄は昭和三一年五月八日の第一囘公判期日において公訴事実全部を認め、弁護人においても意見がない旨を述べており、その後審理を重ね、一部起訴状が訂正されたときにも被告人や弁護人において異議なくこれに同意しているくらいで、結審に至るまで少しも事実を争つた形跡のないことが明らかである。而して以上のような事実を総合して考えると第三囘公判期日において提出された所論指摘の各書証については被告人は勿論、弁護人においてもこれを証拠とすることに同意したものと推認するのが相当である。従つて右の書証を証拠に採用した原判決にはなんら所論のような違法はないから本論旨は理由がない。
(花輪 山本 下関)